社員の成長にコミットした
コミュニケーション重視の経営とは?

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社員の成長にコミットした
コミュニケーション重視の経営とは?

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by builders_user

株式会社小田島組
代表取締役社長 小田島 直樹 氏

<プロフィール>
1964年岩手県生まれ。中央大学理工学部電気工学科を卒業後、大手建設会社に就職。5年間勤務したのち、株式会社小田島組に転職。1998年同社代表取締役に就任。オリジナルプログラムを使った研修、経営改革の理解を深める早朝勉強会などを通じて社員教育に取り組み、業績の飛躍的な向上を実現した。「スコップとパソコンをつかえる社員の育成」を合言葉にした取り組みが高く評価され、2006年には経済産業省の「IT経営最優秀賞」を受賞するなどITを徹底活用している。

岩手県北上市にある「株式会社小田島組」は、岩手県南地域において道路改良工事、舗装工事、防潮堤工事などの公共事業を主に手がける建設会社です。長年培ってきた確かな技術とノウハウは高く評価されており、「国土交通省 SAFETY優良現場代理人 受賞」をはじめ、多くの栄誉に輝いています。社員教育とコミュニケーションに力を入れているのが同社の特徴で、小田島社長はIT技術を利用して遠く離れた現場で働く社員の飲み会にまで参加するほど。こうした経営スタイルは会社の業績にどのような影響を及ぼすのか、小田島社長にうかがいました。

経営をまったく理解せず赤字転落

大学卒業後は大手建設会社で5年間働きました。その後、父(小田島敏夫氏)が創業した株式会社小田島組に移り、父の後を継いで1998年に代表取締役社長に就任しました。当時を振り返ってみると、かなり多くの時間を地元の人たちや仲間との付き合いに使っていたと思います。ゴルフや旅行、飲み会などに精を出し、社員のことをほとんど顧みられなかった。業界仲間と会うたびに「いやぁ、大変だ。どうしよう。じゃあ、遊ぶ回数を少し減らして、自分達ももう少しだけ頑張ろう」という感じで過ごしていました。本当にダメ社長でしたね(笑)。

当然ですが、そんなことばかりしていれば会社の業績は落ち込みます。社長に就任した当時の私は内部留保の意味もわからず、赤字イコール倒産だと考えていたレベルの経営者でした。そして実際に赤字となり、このままいけば倒産というところまで行きつきます。

「どうすればいい?」と悩みに悩んでいましたが、そんな折、偶然ながら株式会社武蔵野(※家庭やオフィス環境を快適にする清掃サービスを地域密着型で提供するとともに、経営コンサルティング事業を展開)の経営者である小山昇さんの書籍を手に取ります。

即座にその内容に感銘を受けたため、すぐさま同社の営業担当者に連絡し、小山昇さんの元で経営について学ぶ道を選びました。その後、小山さんに出会ったことで、会社の業績だけでなく私の人生が大きく変わります。正直にお話しすると、現在の私は小山さんと武蔵野から教わったことを素直にそのまま実行しているだけです。

会社の経営について、小山さんにご相談させていただいた時の会話はこんな感じです。

「君の会社は、なぜ仕事が少ないのか?」
「地元に公共事業の予算がまわってきません。隣町には仕事がありますが。。。」
「では、隣町の仕事をとるようにすればいい。」
「地元の業界の風習もあり、そういうのはルール違反になってしまいます。」
「そのような気概や考えであれば、私のところに相談に来なくていい。」

小山さんの言葉には、現状維持をよしとしない信念があります。建設業者間の話し合いで受注順を決めるような状況を甘受しているうちは、会社が大きく成長していくような展望を描けません。

岩手県のマーケットは小さいものの、経営努力を怠らなければライバルとなる建設会社よりも、十分に多くの仕事を獲得できる市場です。経営の視点に立って本質的な話をするのであれば、怖いのは同業者の輪から抜けることではなく、競合となる建設会社に勝てないことです。

私が単純なこともあり、すぐに「なるほど」と納得してしまいました(笑)。そこで、さっそく私は話し合いの輪から抜け出ます。それ以来、私はライバルに勝つことだけに集中しました。今まで小田島組がアプローチもしていなかった他の地域に出向き、その地域の仕事を獲得できるように努めました。例えて言うなれば「皆が仲良く食べている食事に横から入り、すみません、お先にいただきます。」といった行動をとりはじめたようなものです。

結果、業績は大きく伸びはじめました。が、その反動として地元の仲間のほとんどが私のもとから去っていきました。業界の慣習に反する行為であったため、父からも「私が築いてきた信用をおまえは全て壊した」と叱らたことをよく覚えています。

しかし、一方で父もまた経営者であったため、「赤字は悪」であることを強く認識していました。そして、赤字の結果としてもたらされる従業員の不幸こそ悪であり、何よりも「社員とその家族の幸せを優先すべき」というアドバイスもしてくれました。その後、業績を改善ができ、父も最終的には「よくやった」と認めてくれましたね。このような父と小山さんの教えによって、私の経営者としてのスタンスや指針が定まったのだと思います。

社員と同じオープンスペースで執務中の小田島氏

人材こそ最大の財産
だからこそ社員教育に大きな投資を

「社員とその家族の幸せ」という話をさせていただきましたが、当社は「社員教育」と「コミュニケーション」、この2つをとても大切にしています。

まず教育についてお話しすると、社内には経営計画および経営方針を記した「経営計画書」があり、その中で稼ぎを生み出す社員になるための指針や方法を明記しています。

お金自体はたいした価値を生み出しません。たとえば、私が1億円という現金資産を持っていたとします。金利1%とすると、年間100万円程度を新たに生み出す程度です。しかし、この1億円を社員教育に投資すると、成長した社員は年間100万円どころではなく、桁違いに大きな金額を稼ぎ出すようになります。大切なのは自分や会社がお金を貯め込むことではなく、社員それぞれが稼げる腕を磨けるようになること。だからこそ、私は社員教育をもっとも要視しているのです。

教育の具体的な内容としては、経営への理解を深め、お客様満足を追求するアイデアを考えるたりする「勉強会」の開催。また、平日の業務終了後に実施される「小田島大学」という任意参加の研修です。小田島大学では、カリキュラムに基づいてスキルアップを図り、建設現場で使うアプリケーションやテレビ電話など実務に近い内容で学習を進めています。業務終了後なので、もちろん残業費も出ますよ(笑)。

社員の学習意欲は高いです。その理由のひとつには、素直にアドバイスを聞き入れる人材を採用していることもあるでしょう。私自身、先ほどお話しした通り、武蔵野の小山さんの教えを素直に聞き入れて実行してきたに過ぎません。その結果として業績が格段によくなったという実例があります。謙虚さや素直さという性質は、人間として本当に大切な財産だと思います。

人の意見に対して斜に構えたり、自身の考えに固執したりせずに、まず教えられたことを実行してみる。それでも上手くいかないことがあれば、自分で工夫して再度試してみる。この方法で物事を進めれば、最初から自分であれこれ考えるよりはるかにスピーディーに物事が進展します。

また、「今まで勉強も努力もあまりしてこなかった。だけど、10年後には高い評価をしてもらえるような人になりたい」といった成長意欲の高い人材も積極的に採用しています。

私は、成長もなく「会社のために身を粉にして頑張ります」といった社員をつくりだすような会社ではダメだと考えています。確かに、以前の日本経済の発展には、そのように家庭を顧みずに仕事優先で働き続けた人たちの頑張りによるところが大きかったと思います。

しかし、これからは会社や仕事のために家族を犠牲にするといったやり方は通用しないでしょう。私にとって社員は財産です。何よりも価値が高いものであり、何としても幸せになってほしいと本気で願っています。「小田島組という会社は、社員みなが人生を豊かにするための道具に過ぎない。自分と家族のために会社を踏み台にして幸せになってほしい」と社員に常々そう話しているのは、そんな想いからきています。

ITを活用した遠隔コミュニケーションで社員交流を活性化

社員教育とともに大事にしているのがコミュニケーションです。

小田島組は、北海道に次いで広大な岩手県全域をカバーしているため、本社と工事現場が100㎞以上離れているケースがたくさんあります。以前は時間をかけて移動し、各スタッフと直接会って話をしたりしていましたが、交通事故のリスクなどもあり、広大なエリア内での移動は大きな課題のひとつでした。この問題を解消するため、現在はWEB会議システムを積極的に活用しています。ベルフェイスというソフトウェアを使って遠隔地とネットワークをつなぎ、画面上で顔を合わせながら問題点を話し合ったり進捗状況を確認したりしています。

そのような実務的な活用だけでなく、最近は社員との飲み会にもITを使えないかと試みています。社員はスマホやタブレット持参で居酒屋に集まり、私は自宅からタブレットを使って飲み会に参加します。スタートして間もない試みですが、社員からは概ね好評価のようです。私が近くにいるといじり倒されるので、私が遠隔で参加してくれたほうがありがたいと(笑)。

WEBを使った遠隔参加の飲み会は特殊な話ですが、通常の飲み会の頻度も小田島組は多い方だと思います。そのようにコミュニケーションを大切にするのは、さまざまな想いや感情を分かち合いたいからです。たとえば、100万円をひとり占めするか分け合うかを選べるのであれば、ひとり占めした方が得した気になるでしょう。しかし、分け合うのがお金ではなく「喜び」だったらどうでしょうか。「喜び」であれば、多くの人と分かち合ったほうが楽しいですよね。

人と人がお互いに知り合うと喜びも悲しみも増えます。社員の肉親が亡くなれば悲しいし、子どもが生まれればうれしい。こうした感情の起伏を、私は「人生の充実」と呼んでいます。人と知り合うごとに面倒は増えますが、それ以上に人生が充実するんです。だからこそ、懸命に働いて収益を上げ、多くの社員を採用するようにしています。

また、このようにコミュニケーションを重視していることが要因かと思いますが、離職率も非常に低くなりました。これも小田島組の自慢のひとつですね。

社員同士がコミュニケーションをとりやすいように考えて執務室をレイアウト

先ほどお話ししたとおり、地域の慣習を破ったことで業界の仲間が少なくなりました。しかし、去った仲間の数以上に、同じ想いや考えを持った経営者仲間が増えました。価値観を共有できる仲間たちと切磋琢磨するのは本当に有意義で楽しい時間です。新たな知識を吸収し自分自身をどんどん変化させないと、そんな仲間たちから置き去りにされてしまう。そういうスリルさえ今は楽しいですね。

社員とのコミュニケーションはそうした切磋琢磨とは異なりますが、一度しかない人生を小田島組に費やしてくれたすべての社員には幸せになってほしい。そう本気で考えています。

ITサービスを自社開発し
ビジネス領域のさらなる拡大を目指す

私の持論は「常に自分の殻を脱ぎ捨てて成長しないといけない」というもの。楽をして高い給料を受け取ることはできないので、どんどん脱皮して新しい自分に生まれ変わる必要があります。ITの活用もその流れのひとつで、好きとか嫌いといった理由で選ぶ性質のものではありません。ITが業務を効率化してくれるのなら、素直に取り入れて使いこなしていくしかないんです。私が社長に就任した当初、父と比べて知識や人脈など建設業界で使える武器が何もありませんでした。自分の存在意義を示せるものは何か?と考えたとき頭に浮かんだのがITです。

大手建設会社に勤めていた頃にサイボウズ(グループウェア「サイボウズOffice」などを展開するソフトウェア開発企業)のソフトウェアを使っていたこともり、比較的ITに関する知識や興味を持っていました。このため、早い段階からITに着目し、自社だけでなく他の建設会社にとっても活用できるコンテンツはないかと考えていました。そして、「位置コミ」という商品を2004年にリリースします。はい、そうなんです。小田島組ではIT技術を採用するだけでなく自社でもIT関連サービスを開発・展開しています。

携帯電話で写真を撮って「位置コミ」に入力すれば、その写真から修理箇所と位置情報が瞬時にわかるという仕組みです。今でこそ珍しいものではないかもしれませんが、そのようなサービスは10年以上前にはありませんでした。結果として、簡単な補修工事であれば、わずか3時間ほどで作業が完了するほどの効率化をもたらしました。これが当社のIT関連商品の第1号で、今でも岩手県の道路維持に活用されています。

そして現在、展開に力を入れているのが建設現場でもパソコンで工事の進捗状況を確認できるサービスです。管理会社と建設現場の場所がたとえ100㎞離れていても、現場のパソコンで常に状況をチェックできます。このサービスには2つのメリットがあります。ひとつは、工事現場の様子を常にモニターできるので不要なトラブルを回避できます。もうひとつは女性人材の活用です。現場で力作業は男性が適していますが、情報をパソコン上でチェックし必要な画像を取り込んだり現場の状況を書類にまとめたりする作業は女性のほうが適しています。女性が活躍できる仕事が増えたため、当社では女性社員の数が最近大きく増えています。

建設工事の県内シェア拡大を目指すのは当然ですが、今後はIT技術を用いた建設業務改善システムも展開し、ビジネス領域をさらに拡大したいと考えています。そして、私自身が非常に楽しみにしているのですが、来年は本社を移転します。とてもスタイリッシュなオフィスができる予定ですので楽しみにしておいてください(笑)。

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この記事はBuilders Tech編集部により作成されました。