地縁なし・予算なしのゼロからのスタート
失敗を繰り返しても成長し続ける経営の秘訣とは?

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地縁なし・予算なしのゼロからのスタート
失敗を繰り返しても成長し続ける経営の秘訣とは?

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by Builders Tech

株式会社イズ
代表取締役 名越 生雄 氏

<プロフィール>
1972年大阪府柏原市生まれ。商社、住宅メーカー勤務を経て、2006年6月にリフォーム事業を行うイズプランニングを設立。2007年1月、株式会社イズに社名を変更し、リフォームを中心に幅広く事業を展開。好きな言葉は「日々勉強」。保有資格は宅地建物取引士、インテリアコーディネーターなど取得。ソフトバンクの孫正義氏や楽天の三木谷氏の書籍を経営の参考として愛読。

大阪府堺市中区の「株式会社イズ」は、住宅リフォームを中心に外壁塗装工事、不動産仲介(中古住宅販売+リノベーション)などを展開する会社です。従業員には20代の若手社員が数多く含まれており、2018年には店舗を拡大するなど右肩上がりで成長を続けています。業績の拡大にIT活用が欠かせないと判断し、コミュニケーションの活性化や業務効率化を実現するシステムを次々と採用。「企業の成長戦略にITは欠かせない」と話す名越社長の真意はどこにあるのか。イズの今後の展開をどのように計画しているのか、名越社長ご本人にうかがいました。

創業時の資金はたったの18万円

私は、賢い人間ではありません。失敗もたくさん経験しています。高校を卒業して商社に就職し、建築資材の営業を担当。その後、注文住宅のメーカーに転職して5年ほど働いてから独立しました。起業前の各会社での営業成績は悪くありませんでしたが、当時「いずれ私は社長になるんだ」などと高い志を持っていたわけではありません。どちらかと言えば、その時の流れなどもあって半ば仕方なく独立したような感じです。

創業時の資金は18万円です(笑)。事務所も車もない状況だったので、とりあえず日銭を稼ごうと考えました。最初に請け負ったのは建築現場の下請けです。解体作業や洗い工事などを行って日当を稼ぐような生活を3か月ほど続けました。ある程度の売上が見込めるようになり、この調子なら大丈夫かもしれないと株式会社イズを設立したのは2007年1月のことです。スタート時の従業員は、私と経理担当だった妻の二人だけでした。

なぜリフォーム事業に特化した会社にしたかというと、住宅会社に在籍していた当時、新築住宅という分野は大手ハウスメーカーが主導権を握るだろうと考えたからです。 大手ハウスメーカー以上のクオリティを出そうとすると、新参の私がどんなに努力しても費用がはね上がってしまいます。それなら信頼やブランド力があり、メンテナンスもしっかりしている大手ハウスメーカーに注文したほうが、お客様は安心できるはずです。お客様のメリットを考えたら、我々が手を付ける分野ではないと思いました。だから、起業時はリフォーム事業に特化しようと考えていたのです。

当時を振り返ると、私には本当に何もありませんでした。経営ノウハウなど全く知らないまま起業した感じです。お金もなければ知識もない。そもそも私は地元の人間でもありません。会社の周辺に身内は誰もいません。知り合いのいないエリアで、工務店を開業する難しさを独立後すぐに経験しました。幸い、私は営業が不得意な方ではなかったため、下請けではありましたが短い期間で十分な量の仕事を集めることができるようになりました。そして、その後約3年ですべての仕事を元請けとしてご依頼いただけるようになります。

一方で、苦労したのは採用した社員の処遇です。ひとりでやっていた時は何でも気楽に決められましたが、人を採用してからは「人を採用したからには、ちゃんと経営しないといかん」と思い直しました。 そこで、簡単な会計の本を読むことからはじめました。資金調達に関しても、やさしい本で学んで銀行に行きました。そのぐらいの経営者ですから、最初は門前払いでしたよ(笑)。

何もないままスタートした会社ですが、何もなかったからこそ、さまざまな知識や経験をスーッと吸収できたと思います。今でこそイズという会社には、経営理念、企業理念、社訓・社是、経営目標などを打ち立てていますが、これらは会社として結果が出はじめた後に整理をしたものです。 正直にお話しすると、起業した当初は理念など気にしたこともありませんでした。それでも会社を興して経営できるのですから、やる気さえあれば何でもできるということ。今では経営者として実現したい夢や目標もたくさんありますよ。

人も会社の「素直さ」こそが成長に必要不可欠

経営者になると、さまざまな人から話を聞くことができて視野が広がります。独立開業してから12年、その間に初めて知ったことや経験したことが本当にたくさんありました。 人から聞いた話を検証し、自分の中に取り込んでパワーに変える。これを私は「職力」と呼んでいます。大事なのは学力ではなく「職力」です。社会人として得た知識に「職力」を掛け算するとビジネスに転換できます。

また、経営者に限らず、従業員にも求められる大切な資質は「素直」であることだと思います。このため、私はイズの社員に対して「人の言うことを素直に受け入れないと損をする。まずは素直に話を聞いて騙されてみればいい。」と伝えています。何が正しいのか?何が間違っているのか?ということをまずは「素直に信じる」という実体験を通して学べば良いのです。 付け加えると、「いやです」とも言わないほうがいいでしょう。何かを拒否するというのは騙されまいと予防線を張ることなので、社員には「見栄を張ってでも嫌と言わないほうが賢くなるよ」と話しています。

そして、嘘もついたらいけません。嘘をつくと面倒になるのは私自身がもっともよく理解しています。私が20代の頃は営業成績を伸ばすために小さい嘘をついたこともありましたが、嘘はリスクとなって自分にはね返ってきます。そのリスクを排除するには大変な労力を要します。それなら最初から嘘をつくのではなく、見栄を張ったらいいんです。

当社が定めた「イズバリュー・信条編」の第7項には「見栄を張りなさい」と明記しています。その真意は「張った見栄を実現するくらい、頑張ったらいい」ということです。まったくの嘘は実現不可能ですが、見栄は努力次第で必ず実現できます。自分から張った見栄が成長につながるのです。

当社では、会社説明会で「20代で学べることは20代のうちに片付けなさい」とも話しています。脳がスポンジのように知識を吸収できるのは20代半ばまで。ここまでの期間にどれほど知識を詰め込めるかで、人としての器の大きさが決まります。 器をできるだけ大きくしておかないと、こぼれるものも増えます。器の大きさが決まってしまうと後で拡張することはできないので、20歳代の前半は器を大きくすることに集中すべきです。

これは、人生に勝ち負けがあるとしたら「その勝ち組になるにはどうしたらいいか」という問いに対する私なりの回答です。会社がなくなっても食べていける器を確保することが大事で、これが実現できればすぐに勝ち組です。そうすれば、社会人になってどれほど失敗しても大丈夫です。

これについては私自身がすでに実体験として証明できているかと思います。私程度のレベルでよいのなら、誰だって問題ありません。面接で「私のように何もないところから、会社の経営ができるぐらいに成長したい?」と聞いた際に、「なりたいです」と答えてくれたらもう大丈夫。いまいる多くの社員は、この話に納得し、入社してくれた人間がほとんどです。

イズには若く素直な社員が多い

優秀な人材確保と業績拡大にはITも必須

当社はだいぶ前からITを活用していますが、そのベースとなる考え方はいたってシンプルです。

まず、「◯◯年までに売上高◯◯億円」という数値目標があるとします。この目標をクリアするためには何が一番必要かというと、優秀な社員です。そんな仕事ができる社員は、きっと給料が高く、早く帰宅できる良い会社を選ぶでしょう。では、そんな会社をつくるにはどうしたらいいか? ITです。そんなシンプルな理由で、当社では早くからITの活用を進めています。

以前、GoogleやYahoo!といった大手IT企業が社内コミュニケーションでチャットを使っているという話を聞き、それは効率が良さそうだと考えていました。
そこで、チャット機能以外にも多様な機能を搭載した「ANDPAD」という施工管理用のソフトウェアを導入します。2013年の話ですので、かなり早いタイミングでの導入だったと思います。他のソフトウェアと比較した上での導入でしたが、決め手はコストパフォーマンスの良さです。

ANDPADでよく使うのはチャット、写真・資料整理、工程表管理、勤怠管理といった機能です。とくに、チャットはコミュニケーション記録に残るので以前のような「言った、言わない」のトラブルがなくなり、外部の協力会社とのやり取りがとてもスムーズになりました。

社外だけでなく、事務所内で連絡を取り合う際にもチャットを使っています。当人同士はすぐ近くに座っていたりするのですが(笑)。社員間のやり取りをテキスト化するのは多くの利点があり、上司の仕事ぶりをチェックしたり若手社員の教育に活用したりすることができます。特に最近の若手社員はこのやり方が合っているようで、以前よりも仕事がはかどっている感じがします。ITシステムの導入を迷っている企業の担当者には、このようなチャット機能を半年間使うだけでも結果が大きく違ってくると伝えてあげたいですね。

一方で、チャットを含めた多様な機能を使いこなすには、低くないハードルがいくつかあります。社内や協力会社からも「そんな複雑なものは使いこなせない」といった不平不満も出てくるはずです。当社でも皆がしっかりと使えるようになるまでに相当な時間を要しました。ですが、この時勢にあって、業務効率化を実現するIT技術に価値を見いだせないようでは、下請け・孫請け会社として建設業界に存在するしかできなくなるでしょう。確実に収益を上げ、自立した会社運営を持続させるには、ANDPADのようなアプリケーションの導入はマストなのです。

今後の展開について

「2025年までに従業員を140人に拡大し、売上高50億円を目指す」という目標を2013年に立てました。現在はゴールから逆算して何をすべきかを考え、一つずつ実行している段階です。

2018年、大阪市を北と南で上下半分にエリアを分け、その南側で一番になろうと努めてきました。結果、トップシェアを取ることができたのではないかと考えています。しかし、そこで守りに入っていてはすぐにひっくり返されてしまいます。トップの座を継続するには、攻め続けなくてはなりません。 そのため、2019年中には3店舗増やし、合計7店舗になる予定です。大阪市の南側エリアでシェアを確保し、トップを維持し続けるのが当面の目標です。

また、これまではリフォームを中心に事業展開してきましたが、今後は不動産事業を強化しようと考えています。現状では年間で数件しか取り扱っていないのですが、各店舗でも不動産を取り扱うように切り替えていく方針です。そのために現在取り組んでいるのはRPA(Robotic Process Automation/パソコンの中にあるソフトウェア型のロボットが主にデスクワークを代行・自動化する概念)です。

不動産案件のアンケート用紙に文字読み取り機能をつけ、RPAでそのままANDPADに取り込めるようするのが理想形です。そうすれば、不動産の相談から契約、施工、引き渡し、メンテナンスに至るまでのすべてのデータを集約することができます。将来的にはこういった住宅関連の履歴データ全般が大きな武器になると考えています。

会社のためになるとともに、世のため人のためになるのがよい経営です。本当の意味でお客様に喜ばれる商品は何かと考えると、それは中古住宅になります。中古住宅の価値を正しく判断し、計画を立案し、リフォーム込みの価格を安い金利で提案すれば、お客様は中古住宅を買い求めやすくなります。

現状はどうなっているかというと、ほとんどのお客様は中古住宅を購入してからでないとリフォーム計画を立てられません。このやり方はお客様ファーストとはいえず、不動産や中古住宅の流通が滞っている原因になっていると私は考えます。こうした不動産仲介とリフォーム事業のリンクにはITの活用が不可欠です。どうすればANDPADをうまく利用して会社の売上を伸ばすことができるのか、じっくりと策を練っているところです。

イズには日々楽しそうに過ごす社員も多い

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この記事はBuilders Tech編集部により作成されました。
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